ゴールド免許だったのにスピード違反でネズミ捕りに引っかかった話。

趣 味 / SNS

筆者の住んでいる福岡県内の地域は
車を一人一台持っている家庭が多い。

そのため、友人たちの多くは
18歳になった時、当たり前のように自動車学校へ通い
運転免許を取得する。


筆者自身も同様に高校を卒業してすぐ、
18歳のときに自動車免許を取得した。

そこから早、十数年。


小さくぶつけた事は何度かあるし
内輪差でタイヤをパンクさせたこともある。

運転は上手い方ではないと思う。


だが、事故は一度もない。

スピードを出す事があまり好きではなく、
高速道路でも基本的には走行車線を走ってきた。

法定速度は、守ってきたつもりである。


警察に車を止られたことすら一度もなかった。


それなのに…。

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1月だというのにコートが必要ないと感じたある日の正午。


スーパーへ食料を調達に行く前に
明太子専門店へ寄って、
少し贅沢に明太子を1,000円分購入した。

全ての買い物を終え車に乗り込むと時間は昼下がり。
ポカポカとした陽気のせいで車の中が暖かかった。


“明太子が痛まないように早めに帰らなければ”


確かに、そう思ったことを覚えている。

だからといって、無理に飛ばしたりはしない。

自宅までおよそ30分。

こういう時にも焦らないのが
これまでゴールド免許を所持し続けた所以だ。


“常に最悪の事態を避ける”


腕を骨折していると思われる友人を

病院へ運んだ時だって、至って冷静に運転をした。


“スピード違反で捕まった夫を嘲笑ったこともあった”


なぜか幼い頃から、運転手が捕まった場面で
助手席に乗っていることが多い人生だった。


“普通に運転していれば大丈夫なのに。”


心からそう思っていた。

それを信じて疑った事など一度もなかった。


“目があった。”

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緩いカーブの先の歩道にいる堅苦しい装いの人と目が合った。


“あの人、驚いた顔をしている。”


すると、
車の前の道路に白いヘルメットをつけた警官が
旗を持って飛び出してきた。


“どうして脇道に誘導されているのだろう。”


私はまっすぐ進みたいのに。

“検問だろうか?構わない。どんな検査でもしてくれていい。”


「スピード違反ですねー!
 エンジンを切って車の鍵を閉めてパトカーまで来てください!」

「印鑑かシャチハタはありますか?」


私は此の期に及んでも至って冷静だった。

踏切を越え、線路沿いの片側一車線の道路を呑気に走っていた。

通勤ラッシュ時にはとても混むこの道が
昼下がりにはすれ違う車さえまばらだ。


道路の片側には線路。
もう方々には住宅地が広がっている。

まっすぐに進みたいのにも関わらず
脇道に誘導された私。

車を進めて自宅へ向かいたいのにも関わらず
エンジンを停止させられ鍵までしめた上で
歩いてパトカーまで向かっている私。


空の太陽は雲で隠れ、
先ほどまでの暖かさはなくなっていた。

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先ほどとは違う警官に
40キロの道を56キロで走っていたと告げられ
免許証を提示するように言われる。


違反だということに間違いはないが
人に迷惑をかけたいとは思わない。


話を受け入れ左手の人差し指で拇印を押した。


そして別の車のそばへ移動させられる。


コートを着ていない私にはとても寒い。


また別の警官が書類を記入している。


そんな最中、次々と他に検挙された人たちが集まって来た。

“同士か。いや、同士ではない。
私はつい5分前までゴールド免許だったのだから。”

“この人も56キロで走行していたのか。”

“どの車の速度も56キロと出るのではないだろうか。”

“機械のミスじゃないのだろうか。”

“違う。何かの間違えだ。”

“どうして12,000円も払わなければならないのだろう。”

“寒い。”

“なんのために払うのだろう。”

“何に使われるのだろう。”

“夫には、これまでの無礼を謝ろう。”

“母よ、警察に捕まった私を悲しむのか。”

“明太子を早く冷蔵庫へ入れたい。”

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そんなことが頭をぐるぐる駆け巡っていると

「今回点数が2点引かれますが、優良運転手さんなので
これから三ヶ月間のあいだ無事故無違反だと点数は戻されます」

「今回の違反金が12,000円ですね。郵便局か銀行で払ってください。」

と説明がされ、また拇印を押印。

知り尽くした自分自身の情報が記入された青い薄手の紙と
白地に緑の文字が書かれた”納付書”が渡され、釈放された。


そんな事はもはやどうだっていい。


大事なのは”ゴールド免許””そうじゃないか”それだけだ。


ゴールド免許であることほど
胸を張って自慢を出来る事は、私にはない。


いや、私にはなかった、という方がもう正しいのだろう。

そして、身は解放された。

だが、心は捕らえられたまま。


“線路沿いの道へ戻りたい。”


そう願ってはいるものの、

弱り切った私にはそんな勇気は無かった。


“捕まった私をどうせ嘲笑っているのだろう。”


脇道をそのまま進んだ。


“ここはどこなのか”

“どうすれば元の道へ戻れるのか”

“携帯で地図を見たい”

“車を停車させる勇気が出ない”

“また捕まるのが怖い”

“早く家に帰りたい”


ここからの記憶が曖昧となっている。


気づくと私は、
明太子を冷蔵庫に入れるため包装を解いていた。


すぐ側には、反則金の領収書が見える。


姿を現した、1,000円分のぶつ切り明太子は
なぜか冷凍されていた。

こうなることを見越していたかのように。


おわり

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釈放時に渡された紙と、
郵便局で支払いを済ませた時に渡された紙。

郵便局にて反則金を支払う場合は
納付書に住所、氏名を記入し窓口へ提出。

すると、
写真右の紫の紙「歳入金・公金納付依頼書」を渡され
“名前”と”連絡先”を記入。

反則金を支払い、「お客様控え」を渡され納付完了。

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